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【映画レビュー03】十二人の死にたい子どもたち(ネタバレあり)

2019年も1ヶ月が経ってしまいましたね。年始に今年は頑張ろうと心に決めたことも日常の忙しさに段々と薄れていくような今日この頃です。「今年は100本映画を観る」という目標を立てたので、モチベーションを保つ為にもこの映画レビューの投稿も頑張ります。

 

さて、今年に入って初の邦画がこの「十二人の死にたい子どもたち」。昨年から映画館での予告映像も多く流されておりチェックしていた作品です。興行収入が公開初週にしてかなり凄いということで観に行きました。この作品の脚本は映画オリジナルだと思い込んでいたのですが、原作がしっかりあるみたいですね。(リサーチ不足)冲方丁(ウブカタトウ)さんの第156回直木賞候補となった作品が原作だそうです。この冲方丁さんは時代小説やSF小説を中心に執筆されているそうで、初めて現代を舞台に書いたミステリー小説がこの作品とのこと。これを、「イニシエーション・ラブ」「トリック」などを手がけてきた堤幸彦監督が実写化したとあり期待大で観てきました!

 

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評価は2.5/5

原作を読んでいないのであまり勝手なことは言えないのですが、実写化するには少々時間的な制約がありすぎたのではないかと思います。時間の関係で人物の背景の描写に関して荒い部分が多いと感じました。そのせいで原作を知らない人からすれば、少々ストーリーを鵜呑みに出来ない部分が多かったです。2時間弱の映像化には向いていなかったのかもしれません。逆に原作を忠実に再現できていたとすれば、そもそも原作自体が冲方丁の他のジャンルに比べて完成度が低かったのではと疑わざるを得なかったです。しかし、ミステリーの仕掛けや自殺をテーマに見せかけてもっと大きな主題を思わせるような不透明さに作品として魅力を感じました。

 では具体的に映画を振り返っていきたいと思います。

 

1 ハードルが上がり過ぎた

2 そもそも12人本当に必要だったのか?

3 ミステリーとしての完成度の高さ

4 映画の主題

 

 

1 ハードルが上がり過ぎた

キャスト陣は間違いなく豪華でしょう。杉咲花新田真剣佑、橋本環奈、北村匠海などなど旬の若手俳優や女優が出演しており、それだけで観る価値ありですね。そしてPRイベントもそれなりに行っていたので、意識していなくても映画の存在を認知していた人は多かったと思います。映画の予告のホラーを思わせるような内容は印象的でしたね。が、それゆえにハードルが少々上がり過ぎていたのかもしれないです。というより想像していた展開とはちょっと違ったかもしれない。もっと過激で血や叫び声が飛び交うような展開かと勝手に想像していたばっかりに物足りなさが残りました。これに関しては私のリサーチ不足でしたが、下の予告映像を見ていただければ分かるように殺人鬼が実際に存在するように思わせる表現が使われています。事実として、鑑賞後にかなりの数ギャップを抱いた人がいたはず。今回の場合はギャップが悪い方向に働いたと言えます。

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2 そもそも12人本当に必要だったのか?

原作を読んでいないので推測に域に過ぎないのですが、「12」という数字の意味について考えたいと思います。殺人鬼ジェイソンの登場する13日の金曜日でも有名ですが「13」という数字では不吉な数字とされていますよね。そこで「13人目」を死体にしようと考えて、12人の子供たちを登場人物のしたのではないでしょうか。しかし、この「12」という数字が映画かにあたり悪影響したなと思います。というのも12人も主要な登場人物を集めたが為に一人一人に着目する時間が明らかにありませんでした。自殺という多くの人からすると共感し辛いトピックを扱うのだから登場人物の自殺願望に至る経緯を丁寧に描かないと共感も出来ないし心情の変化が理解出来ないままです。そんな状況で淡々と進んだ結果、茶番劇のように見えてしまいました。今回はまるでクラスの討論会を見せられているような気分でした。登場人物たちの内面描写が希薄なあまりに最後の重要な意思決定の場面が鵜呑みに出来ませんでした

3 ミステリーとしての完成度の高さ

人物の描写の希薄さはさておき、ミステリーとしては完成度が高いと思料しました。子供達の実際の到着順とは全く違う順番で物語を見せたり、祈りの会に偶発的な事件を折り込むことで仕掛けが複雑になり、いかにも殺人鬼が潜んでいるように思えました。そのため後から思えば明らかな伏線が随所に散りばめられているにも関わらず、結果として最後まで真相は掴めませんでした。しかし、物語を成立させる為に必要だったノブオの離脱が少々粗かった点だけが気になります。メイコがノブオを階段から突き落とした時にどうして他の誰も気づかなかったのか。そして単純にノブオの存在が自殺が実行の妨げになるという理由だけで、メイコのような真面目の少女に他人を殺めることが出来るのかなど。ツッコミどころも多くありました。

 

4 映画の主題

この映画のラストでは自殺願望者同士が集まり話し合うことで生きるという結論に至りましたが、反対に今後も必ず自殺を持って社会に対する講義を行いたいとする「アンリ」のような子供の存在も肯定する形でした。つまり、一見するとこの映画は「自殺、ダメ、ぜったい!」というような道徳のビデオのように見えがちですが、今後も祈りの会を催すサトシと、それに参加し自殺を実行させようとする「アンリ」の対峙で象徴されるように、結局のところは自殺を肯定も否定もしておらず、あくまでもツールとして扱っていません。本当に描きたかったのは自殺が良いとか悪いとかそんな次元ではなく、同じ意思を持った人間を集めることで全く違う方向へ進むこともあり得るという人間のある種のロジカルでない側面だったんではないでしょうか。(あくまで推測に過ぎませんが、自殺ダメにしては登場人物に対してあまりにも距離があった。) 

 

総論

ハードルが高かった為に評価としては低めでしたが、映画の主題を考えたり謎解きは面白く、ファーストーデーでお得に見られたから良かったかなってところです。

 

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